地方都市のホテルに宿泊している(ここから既に夢)。このホテルの大宴会場で演奏するらしいのだが。泊まる部屋がなかなか決まらないので、会議室の古いピアノで練習しているのだ。
後悔のない日々を送るって、難しい。
会場に向かうが現場は揉めていた。機材が足りない、いや揃った。出演順は?、セットリストは?曲のキーは?とスッタモンダしているうちに「開場まであと30分ですので」と追い出される。
蛍光灯が眩しい白っぽい楽屋。ポンタさんが話しかけてきた「おっ!タネダお前も出るんだっけ。なにやんの?」「石井さんとピアノトリオですよ」「へえー・・。えっ、俺が叩くの?早く言えよ!」「・・・」
取り仕切っているのは伝兵衛さん。遅刻して楽屋に現れる。「ヤッホー」「でさあ・・、石井ちゃん今日なにやるんだっけ?」「タネちゃんは?」「ほーう。インストですか。偉くなりましたな(ニヤニヤ)」「実はギャラ出ませんが、いやウソです。では本番ひとつよろしく」
本番が始まった。あれ?佐山さんがいる。シャンデリアを消した薄暗いホールに「ウエスが聴こえる」が溶けていく。アタマの感覚も気持ち良く痺れていく。深いエコー。何をやっても辻褄が合う不思議なバンドだ。煙草の香り。夢か、うつつか。「ここまで全て」が、まるで日常のように、なめらかな夢。
ちょうど1年くらい前の八王子。「シャーロックホームズ音楽祭」で伝兵衛さんと演奏した(ここからは現実)。この夜「平山みき」さんがメインで伝兵衛さんがサブのような扱いになっていて、伝兵衛さんはあまり機嫌が良くなかった。
でも伝兵衛さんのステージは大変素晴らしいものだった。平山みきさんの華やかなカリスマと歌唱力も流石だった。満席の客席に知った顔もおらず、そう、知り合いに一人も会わなかった不思議な夜だった。夢だったかのようなふわっとした記憶だ。主催者はホテルの部屋まで取ってくれていたが、伝兵衛さんは「帰ろう」と膠(にべ)もなく車に機材を積んだ。
このあと、帰り道で警察とトラブルになった。その警官数名は、進入禁止の路地の奥で待ち伏せしていたのだ。伝兵衛さんは執拗に反駁し続けた。
「あのね、あなたたち警察は、この進入禁止の標識が見にくいの知ってたんですよね?」「標識があるのは、ここで事故が起こりやすいからですよね?」「事故を抑止するのが警察官の仕事じゃないんですか?」「危険な進入を隠れて黙って見ていたんですか?事故を誘発してるにも等しいですよね。」「訴えますよ。」
警官はうんざりするように言った。「はい、もう今日はいいですから、これから気をつけてください。行ってください。」
伝兵衛さんと会ったのはこのときが最後ということになる。帰り道はスティーブガッドとのライブのエピソードを実に嬉しそうに話してくれた。「スティーブもマネージャーも「また是非」って言ってくれたから来年はブルーノートで皆んなでやれるよ」なんて。
この夜は写真がたったの2枚。写真なんてまたいつでも撮れると思っていた。
八王子のシャーロックホームズの写真と、湘南のフリースタジオに立ち寄って浅葉くんに会ったときのもの。
そうだ。フリースタジオ湘南にも、もっと行っておきたいね。
そうだ。フリースタジオ湘南にも、もっと行っておきたいね。
後悔のない日々を送るって、難しい。
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