2014年3月7日金曜日

旅で逢ったひと。

ここは5000万年まえに生まれた島。
ずっと平和な楽園だったけれど500年前に海を巡る争いが始まり、100年前には島でいちばん美しい山の頂上に威風堂々たる「塹壕と砲台」まで造られた。
以来、精鋭の兵士がまばたきもせず水平線に睨みを利かせているのだけれど、砲弾を発射したことは不思議と一度もないという。

悠久のなかで育まれた白い砂浜、岩礁、珊瑚礁、雄々しい休火山、熱帯雨林。やさしい人たち。平和なとき。

ここを訪れる白人の8割はお年寄りで、山頂までのんびりとした長い列が続く。
いっぽう私たちアジア人観光客はみんな若い。
私は頂上までの道のりで白人のお年寄りを100人ほど追い抜いたけれど、そのたびに「Overtaken..」という小さな溜め息を背中で聞かされ胸がぎゅっと鳴った。
山頂の眺望は素晴らしく、汗が乾くまで遠くを見つめた。

その人と出逢ったのは下り坂の7合目のこと。
濃紺と花柄のワンピピースと麦わら帽子がとてもよく似合う銀髪の女性が、山道の柵を乗り出して小さな樹に何かをくっ付けようとしていた。

「Is there anything do for you?」
返事はない。可愛らしい人形はなかなか枝に立ってくれない。

「よしできた。」
彼女は笑顔で一歩下がって写真を撮る。
ぼくらは横を通り過ぎる。
彼女のつぶやきがきこえる。
「ハニー、また一緒に来られたわねえ。」

胸がぎゅっと鳴った。


みなさんよき週末を。

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